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京都勢の絆、ワールドクラスの脚力も、武田豊樹の前には引き立て役でしかなかった。力勝負のまくりで別線をネジ伏せたが、道中は不覚を取って8番手。決して楽な流れではなかった。 「苦しかったけど、内容はあった。もうスピードが上がってたし。俺が切りに行ったら、深谷(知広)君も切ったから。(後方に置かれた)あそこら辺はヘタクソですね」
赤板で押さえに出た武田だったが、京都勢に合わせて出た深谷に上を行かれて中団確保の思惑はかなわなかった。
「気合をこめてこの一戦を走りました。自分としては理想は中団にいたかったけど。深谷君に前を切られてしまって、最悪の8番手だった。それでも自分を信じて最後まで走りました」
組み立ての甘さを補って有り余るパワー。数的に有利な京都勢の2段駆けを粉砕した武田の進化は、別線の想像をはるかに越えていた。
「一瞬やった。3歩くらいで行ってしまった」と、村上義弘が振り返るように、万全のシフトを敷いた京都勢も武田を食い止めることはできなかった。
番手発進の川村晃司をとらえた武田に、村上がスイッチ。直線で村上が猛追するが、逆転するまでに至らず武田の完勝劇で短期決戦の幕を閉じた。
「長塚(智広)君が後ろにいると思ってたんで、茨城の2車でいいゴール前勝負ができるかなと思ってたんですけど。村上君だったんで逃げ切れてよかったです。(今年8度目の優勝は)あきらめずにずっとやってきている結果だと思います。オールスターではファン投票に恥じることない走りをしたいですね。一走、一走、自分らしい走りを一生懸命やって頑張ります」
およそ3年ぶりとなった高松宮記念杯を含め、今年はG1ひとつにこれでG2が2回。記念の優勝は5度を数え、38歳で最盛期を迎えて“武田一強時代”の到来を感じさせる圧巻の内容だった。富山記念を経てオールスターを迎える武田は、これからも全力疾走をファンに約束するのだ。
川村が最終1センターから、ちゅうちょなく番手発進。3番手の村上にとっては願ってもない流れになったが、武田に屈して準V。村上は唇をかむ。
「(前の2人が)頑張ってくれた。藤木は任された時点で自分のレースをしてくれたし。(川村)晃司は当然勝つタイミングで行ってくれた。最高の展開になったのに…。僕が悪いです。(武田を)抜きたかった」
京都勢の4番手をキープしたかに見えた深谷だったが、菅田壱道にすくわれると渡辺一成、長塚と次々に絡まれ後退。踏み場が訪れたのは最終3コーナー過ぎ。時すでに遅く3着がいっぱい。
「転ぶかと思った、危なかったですね。全然、訳がわからなかった。完敗です」
初めてのビッグ決勝の舞台で責任を果たした藤木が、汗をぬぐいこう振り返る。
「優勝を出さなきゃいけない立場で、自分が2コーナーまでもてばよかったけど。初めてのG2の決勝で自分の仕事は果たした。悔しいけど、次はしっかり力勝負をできるように」
「気持ちよく(藤木が)行ってくれた。あとは僕がどう仕掛けるかだけだった。結果、武田さんに行かれて失敗しているんで」と、番手まくりも力及ばずの川村。
菅田と連結を外した渡辺は、再度追い上げてラインにこだわる走りに終始。五輪戦士の脚を生かすことなく7着に終わった。
「(菅田)壱道に任せたからには。番手をしっかり回っておこうと。横の仕事ができない僕には、展開的に無理でした」
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